香りの用語解説

随時、香りに関する用語解説を追加していきます。

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溶剤抽出

植物の香気成分や呈味成分を
選択的に抽出できる近代技術。

溶剤抽出

古くから香気成分を効率よく取り出す方法として知られるのが水蒸気蒸留です。溶剤抽出は、水蒸気蒸留よりも歴史が浅いのですが、熱に不安定な成分を選択的に抽出できる方法です。今回は溶剤抽出について説明します。

溶剤抽出の特徴
溶剤抽出は、比較的低温での抽出操作が可能であり、熱に不安定な成分も抽出することができます。香気成分は、ほとんどが油に溶解しやすい油溶性で、呈味成分は、水に溶解しやすい水溶性です。それぞれの成分の特徴に合わせて、抽出する溶剤を選択します。溶剤抽出は使用溶剤によっては安全性の観点から溶剤除去が法律で義務づけられています。使用溶剤例として、水、エタノール、アセトン、二酸化炭素、食用油脂などがあります。

溶剤抽出分類
香料分野における溶剤抽出は、水抽出、有機溶剤抽出と超臨界二酸化炭素抽出の大きく3つに分けられます。

水抽出
溶剤とは、物質を溶かす性質をもつ物質のことで、最も一般的なものは水となりますが、水は無機物のため有機溶剤には入りません。
水抽出や、有機溶剤と水とを混合して用いる含水エタノール抽出は、水溶性の呈味成分を抽出する際に広く使用されています。例えば、バニラ原料を含水エタノール抽出した場合、バニラ特有の甘い香気成分と呈味成分をバランスよく抽出できます。

有機溶剤抽出
有機溶剤抽出は、有機化学の発展に伴い19世紀後半に誕生した比較的新しい方法です。
溶剤の中で有機物(炭素を含む化合物のこと)を含むものを有機溶剤と呼び、香料分野以外にも塗装や洗浄、印刷などあらゆる分野で使用されています。
さまざまな有機溶剤がある中で、香料分野で使用できる溶剤は法律で厳格に決められています。

超臨界二酸化炭素抽出
超臨界二酸化炭素抽出は、普段空気中にある二酸化炭素を利用した環境にも負荷が少なく安全性が高い方法です。

溶剤抽出の方法
原料と溶剤との接触方法の違いにより攪拌式、循環式、回分式あるいは多段式、ならびに連続式に分けられます。

攪拌式
原料と溶剤を混合して抽出を行います。

循環式
原料を固定相として溶剤を循環して抽出します。

回分式
1つの抽出塔に原料を固定相として溶剤を供給して抽出します。原料投入から抽出、抽出物回収の工程を1回ごとに区切り、順次・間欠的に行います。

多段式
複数の抽出塔を連結し原料を固定相とし、一定方向から溶剤を連続的に供給して抽出します。

連続式
原料と溶剤の両方が移動相であり、それぞれを向流接触させながら抽出します。
原料投入から抽出物回収までを常に同時進行で行い、装置を休ませることなく連続的に処理を続けられるので大量処理向きの方式です。

取り出したい抽出成分や抽出物の物性、また製造場所での装置の稼働状況などを考慮し、使い分けがなされています。

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