香りの用語解説

随時、香りに関する用語解説を追加していきます。

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水蒸気蒸留

植物の香り成分をぎゅっと凝縮、
いにしえより利用されてきた簡便な方法。

水蒸気蒸留

天然香料の原料となる植物から香り成分である精油を抽出する方法としては、水蒸気蒸留、圧搾、溶剤抽出などの方法があります。今回は、最も多く利用される精油の抽出方法である水蒸気蒸留についてご紹介します。

江戸時代に活躍した水蒸気蒸留装置 ランビキ
水蒸気蒸留は水を加熱して水蒸気をつくり、直接原料に当てることで、原料の中の香気成分を採取する方法です。古くから香気成分を効率よく取り出す方法として、汎用的に利用されてきました。すでに13世紀頃のアラビアにおいて現代の水蒸気蒸留装置の元となる装置が発明されています。日本には江戸時代に伝来し「ランビキ」と呼ばれました。ランビキの語源は、蒸留器を意味するポルトガル語 “alambique (アランビック)” に由来しているといわれています。
日本のランビキは陶器でつくられた水冷式の蒸留器が多く、下から沸騰槽・蒸留槽・冷却槽の3つに分かれています。沸騰槽で沸かした湯の水蒸気を蒸留槽の薬草などに接触させると、水蒸気と原料の成分が混じり、冷水の入った冷却槽の内側で結露します。その水滴が冷却槽の壁をつたって、蒸留槽下部の管から外へ排出される仕組みです。

現代の水蒸気蒸留装置
現代の水蒸気蒸留はランビキの原理と同じですが、熱に不安定な香気成分の抽出や効率よく抽出する技術で行われています。一般的に水蒸気は100 ℃ですが、それ以上の150~300 ℃といった高い沸点をもつ香気成分であっても水蒸気とともに採取することができます。この仕組みは水蒸気が香気成分を本来の沸点よりも低い温度で沸騰させる現象に基づいています。
沸騰するメカニズムについてもう少し説明しましょう。水と水に溶解しない香気成分は単独の状態ではそれぞれの蒸気圧を示すため、水は100 ℃、香気成分はそれ以上の高い沸点、例えば柑橘類の皮に多く含まれ、フレッシュなシトラス調の香気成分のlimoneneは176 ℃にならないと沸騰しません。水蒸気蒸留の場合は、水蒸気を当てて両者の蒸気圧の和が外気圧(大気圧の場合1気圧)と等しくなる温度になると香気成分も沸騰するため、単独の状態と比べて、低い圧力で蒸留することになるので、沸点は低くなります。
香気成分を含んだ蒸気をコンデンサで冷却することで、香気成分を含む凝縮液が得られます。その際得られた凝縮水の上面に香気成分を含む油があり、これを精油と呼びます。熱に不安定な香気成分が沸点ほどの高温にさらされずに、分解や変質が少ない状態で採取できることがこの方法の特徴になります。
香料分野ではこの精油が有用な天然の調合原料として広く活用されています。 

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