HASEGAWA LETTER 2025 年( No.43 )/ 2025.01

THトピックス

【書籍出版のお知らせ】科学的な知識でお伝えする
「におい」と「香料」の世界

『香料の科学 第2版』
(講談社刊)

香料の正しい知識の普及に向けて

 私たちの生活の身近にある「におい」は、古代においては神秘的なものとして捉えられていました。やがて文明が発達するとともににおいを利用するようになり、科学技術の進歩とともに香料産業は発展を遂げました。現在では、食品加工技術の発展や生活様式の向上とともに、加工食品や日用品の多くに「香料」が使用されており、私たちの生活に欠かすことができないものとなっています。
 香料はどのようにつくられているのか、長谷川香料では、香料について正しく理解していただくための取り組みを長年行っています。化学的に香料について解説する書籍『においの化学』(裳華房)を出版したのは1988年のことです。2013年には、香料を学ぶための入門書として『香料の科学』(講談社)を出版しました。『香料の科学』は多くの方々に愛読していただき増刷を重ねてまいりましたが、発行から10年あまりが経過しており、新たな情報の追加などの見直しを図り、2024年に改訂版『香料の科学 第2版』を出版しました。

『香料の科学 第2版』(概要)

 本書は、次世代の研究者や利用者が科学の目をとおして香料を知る一冊目の本として、香料に関する歴史や技術の紹介をはじめ、においの役割を科学的に説明しています。香料化合物の名称や安全性に関係する法規は新しい情報に更新しています。

第1章 香料の科学史
歴史とともに発展したにおいを取り巻く文化について解説しています。古代エジプトをはじめとした西洋や日本を含む東洋におけるにおいの活用方法などを紹介し、さらにフレグランス、フレーバーの発明と発展についても説明しています。
第2章 においとは何か
私たちはどのようににおいを感じているのか?においは化学物質でできており、その構造や特徴について化学的に詳しく解説しています。
第3章 香料
加工食品や日用品に使用されている香料はどのようにつくられているのでしょうか。フレグランスとフレーバーの具体的な例を示しながら説明しています。
第4章 香料開発を支える基礎技術
香料を開発するためには、分析、合成、抽出などさまざまな技術が必要です。分析方法などを図で示しながら解説しています。
第5章 においのバイオサイエンス
生物にとってのにおいは、コミュニケーションや情報伝達に重要な役割を担っています。においを感知する機能やその役割について解説しています。
第6章 安心と安全のために
香料を安心して安全に使っていただくために、香料業界全体で安全性確保に取り組んでいます。本章では、法規や評価方法など、その取り組みを紹介しています。

においは重要な情報 
研究が続く香りの世界

 私たちは嗅覚を使っておいしさや心地よさを感じ、時に危険を察知することもあります。視覚から得る情報で判断することが多い中で、においもさまざまな場面で情報として重要な働きをしています。そしてにおいは記憶とも結びついています。ふと嗅いだにおいから、懐かしい記憶を思い出した、という経験をした方もいるのではないでしょうか。
 科学技術の進歩は、ここ数年特に目覚ましいものがあり、香料業界においても新たな取り組みが行われています。五感(視覚、聴覚、体性感覚、味覚、嗅覚)の中で、視覚や聴覚では、ほかの感覚に働きかける技術は生み出されています。では、嗅覚の分野はどうでしょうか。人はどのようににおいを感じているのか、実はそのメカニズムは1990年代まで不明でしたが、今世紀に入り徐々に解明されつつあります。そして今も、世界中の多くの研究者がその課題に取り組んでいます。

 においってなんだろう。本書の科学的な目線による解説で、「におい」と「香料」の新たな世界を感じていただけたらうれしく思います。

本書の印税は、全て公益財団法人日本盲導犬協会へ寄付いたします。

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