爽やかな気分になったり、時には記憶を呼び起こしたり、感情にも影響するチカラをもっている香り。その実体を目の当たりにすることは難しいのですが、まだ知られていない驚異的なチカラがあると私たちは信じています。2026年のHASEGAWA LETTER online では、芳香だけにとどまらない香りがもつチカラを推考していきます。

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OUR 技術レポート

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オレンジジュースの“本物らしさ”を
追いかけて
~オレンジ果汁代替としての乳化香料の活用~

長谷川香料(株)総合研究所
田中大河

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<3分でわかる解説> オレンジジュースの“本物らしさ”を追いかけて
 オレンジジュースは100年以上にわたり世界の食卓を支えてきた定番の飲料である。しかし近年、その安定供給が大きく揺らいでいる。最大の要因は、ブラジルなど主要産地で深刻化する「カンキツグリーニング病」という病害である。防除法が確立されておらず、感染樹の伐採を余儀なくされるケースも多く、収穫量の減少による果汁の価格高騰が世界的な課題となっている。値上げや販売休止が相次ぐ今、果汁の使用量を抑えつつ品質を保つ「代替素材」のニーズが急速に高まっている。
 当社では、オレンジ果汁らしい香りと口当たりの再現を目指し、果実由来の食物繊維を用いて乳化香料の風味発現を改善することで、オレンジ果汁の代替素材を開発した。その効果を客観的に可視化するため、QCM(水晶振動子マイクロバランス)法という微量な質量変化を捉える分析技術を導入した。舌表面を模したセンサーを用い、香料が口腔内にどれだけとどまるかを定量的に評価した。その結果、ペクチン配合の乳化香料は舌に吸着しやすく、果汁感や濃厚感を効果的に補える可能性が示唆された。実際に開発した乳化香料をオレンジ果汁10 %の飲料に添加すると、果汁20 %に近い風味を再現できた。
 この技術はオレンジにとどまらず、グレープフルーツやパイナップル、ユズなど幅広い果汁へ展開可能である。原料リスクが高まる時代において、サプライチェーンの安定化に貢献し、香りのチカラで食の未来を支える実用性の高い研究である。

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THトピックス

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長谷川香料登録特許
(2025年4月~2026年3月)

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社会の中の香り

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香りがひらく、
コーヒーの新世界
~識者が語る魅惑のアロマ~

お話:
滋賀医科大学医学部病理学講座微生物感染症学部門准教授
旦部幸博
聞き手:長谷川香料(株)
品質保証部 櫻井毅彦
総合研究所 大橋輝久、川口賢二

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<3分でわかる解説> 香りがひらく、コーヒーの新世界
 コーヒー好きの間でバイブルと呼ばれている本があります。コーヒー豆の生産から抽出に至るまでの成分変化を科学的に解説した『コーヒーの科学』と、人類がコーヒーと出会ってから今日に至るまでをひもといた『珈琲の世界史』です。どちらも滋賀医科大学の旦部幸博准教授の著作です。旦部先生は微生物と遺伝子の研究がご専門ですが、コーヒーに対する深い見識はコーヒー業界からも注目されています。このたび旦部先生を当社総合研究所にお招きし対談をさせていただきました。対談内容は、旦部先生のコーヒーとの出会いと思い出、コーヒーへのこだわり・楽しみ方などをはじめ、若者世代のコーヒー離れの現状、多様化するコーヒー文化など多岐にわたりました。
 また、HASEGAWA LETTER 2025年(No.43)の記事「モカコーヒーの香り」で取り上げた当社がコーヒーから新たに発見した香り成分であるethyl 3-methylpentanoate (E3MP)について、旦部先生に添加効果を体験していただきました。世界中のコーヒーを飲み続けてきた旦部先生ならではの率直なコメントと評価もぜひご覧ください。
 日本人に人気のモカコーヒー。その魅力、香りと嗜好についてのお話も興味深いです。先生は「コーヒーはその人の人生」とも語られました。そのほかにも、コーヒーの2050年問題、日本のコーヒー文化の未来など、貴重な話題満載の対談となりました。

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レモンの香り
~変わらず愛される香り~

長谷川香料(株)総合研究所
吉本忠司

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<3分でわかる解説> レモンの香り
 世界各国で最も親しまれている柑橘の一つ、レモン。果実そのものや果汁は料理や飲料、菓子など、ジャンルを問うことなく味つけや香りづけ、トッピングなど、さまざまなかたちで使用されている。また、果汁を搾る際に得られる精油分は、フレーバーや香水、アロマオイルなどに用いられており、レモンは余すことなく活用できる万能のフルーツである。
 レモンと人類の間には長い歴史があり、12 世紀のエジプトでは、すでに健康のためのレシピが書物に紹介されており、古くから人々の生活に溶け込んでいる様子がうかがえる。
 レモンを印象づける要素といえる“香り” は、レモンの果皮にある「油胞」と呼ばれる組織に蓄えられている。このレモンの香りを取り出す方法は多岐にわたり、各方法で得られるレモン精油(香りの凝縮液)の特徴について、また、変化しやすいレモンの香りの安定性を高めるための最新の技術について述べる。さらに当社で研究を進めている、レモンの香りの変化を回避するための新しい技術や素材について紹介する。

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水面の桃源郷「スイレン」
~幻想的な美しさを際立たせる香りに触れて~

長谷川香料(株)総合研究所
福地有吾

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<3分でわかる解説> 水面の桃源郷「スイレン」
 スイレン(睡蓮)は初夏の水面をカラフルに彩る水生植物として知られ、そのはかなくも神秘的な姿に多くの人が魅了されている。夜に花を閉じ、朝には再び開花する、その珍しい習性をもつスイレンと人類との歴史は古い。古代文明においてはその生態に復活と再生を繰り返す神の存在を重ね、神聖な植物として親しまれていた。さらにその香りは神に活力を与える供物として捧げられたり、庶民も飾って香りを楽しんだりと、一種のアロマセラピーの役割も担っていたという。現代でも公園などでスイレンを見かけ、シーズンにはにぎわいを見せているが、なかなかその香りを間近で体感することは難しい。香料会社の一員として筆者もいつか嗅いでみたい…その思いをかなえるべく研究に着手した。
 スイレンは原産地の違いから熱帯性と温帯性に大きく分類され、花色や香り、開花の様子などもそれぞれ異なっている。そこで今回滋賀県にある水生植物公園みずの森のご協力のもと、熱帯性および温帯性スイレン数十種類の官能評価を行い、そのうち数種類について詳細な香気分析を実施した。その結果、各スイレンの共通成分や特徴的な成分を明らかにすることができた。今回の研究結果をもとに当社の再現香料aroma CAPTURE® シリーズとしてスイレンの香りを新たに開発した。

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カオリ to ミライ

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香りと言葉とAI
~AIは香りを理解するか?~

関西学院大学副学長・工学部情報工学課程教授
巳波弘佳

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<3分でわかる解説> 香りと言葉とAI
 人類史上初めて、人類以外で、人類と自然に会話できる存在が現れました。それはAI(人工知能)です。関西学院大学工学部の巳波研究室では、AI技術のさらなる高度化だけでなく、その活用による社会課題の解決に向けた研究開発も進めています。長谷川香料(株)総合研究所と巳波研究室との共同研究において、欲しい香りのイメージを伝えるだけで、それに合った香りを選んでくれるAIを開発しました。これは、大規模言語モデルという技術を活用して、香りのイメージを説明する文章を高次元空間の点に変換し、さらにニューラルネットワークというものによって、同じ香りに対応する点かどうか識別できるようにしたものです。その結果、欲しい香りのイメージを言葉で説明すれば、意図をくみ取ってその香りを提示できるようになりました。食品分野の課題解決における最も重要な観点の一つは「おいしさ」ですが、食品香料は、香りを付与することで食品のおいしさを支える大きな役割を担っています。香りの選定や創出などをサポートする「香りのAI」の重要性は一層高まるでしょう。このように、社会課題を解決する有用なツールとして、AIをさまざまな分野で活用し、これまで以上に高いレベルのものを実現できるようにしていくことが重要です。
 このようなAIを実現するための重要な鍵になるのは「言葉」です。言葉を媒介として、例えば香りを扱えるAIを作ることができました。しかし、身体や五感に基づく感覚など、人間には言葉にできないものがあり、まだAIには扱えません。ただ、それらもいずれは扱えるようになっていくでしょう。
 香りについて、もっと語りましょう。たとえ正確でなくても、矛盾があっても、多くの言葉を紡いで「語りえぬものを語ろうとする試みの積み重ね」によって、私たち自身の世界が広がると同時に、いずれ人間と同様の機能も持ったAIと世界を共有できるようになり、AIは人間と協働するパートナーとして育ち、人間だけでは到達し得ない高みに向かい、そして世界はより豊かになることでしょう。

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ようこそ、香りの庭へ
~長谷川香料(株)総合研究所の庭の紹介~

長谷川香料(株)総合研究所
冨田直己

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