色で紡ぐ香りのイメージ
〜見えない香りを見えるように〜

- <3分でわかる解説> 色で紡ぐ香りのイメージ
- 香りの印象やイメージを表現することは非常に難しいことが知られている。例えば、「家で使っているシャンプーの香り」のイメージを他者に伝えようと想像してみると、どのように言葉を選ぶか悩むだろう。そこで、色を使った香りの印象・イメージ表現について記す。
香りは形容詞を使った表現と、比喩表現を軸として表すことが多い。比喩表現はそもそもオレンジを知らない人に対して「オレンジのような」といっても伝わらない。
そこで、言語情報だけでなく、色を使った視覚的な表現を加えることでより香りの印象・イメージの表現がしやすくなるのではないかと考えた。
色は、色みを表す「色相」、明るさを表す「明度」、あざやかさを表す「彩度」の3つの属性で表現ができる。さらに、明るさの明度とあざやかさの彩度を組み合わせたトーンという考え方があり、このトーンを使うことでイメージをうまく表現できそうだということが分かってきた。
色を使った香りの表現では、まず最もシンプルな方法として嗅いだ香りに対して「どの色が調和するか」といった調和色の選択を行った。合わせて言語的な表現でどのような印象があるかを調査すると、調和する色が共通する香りではその印象も共通することや、そこでは色の明るさ、あざやかさが関連しており、トーンを使うことでうまく当てはめられそうなことが分かった。
そこで、色の大きさを調節して香りのイメージを表現する専用のアプリケーションを作成し、より詳細に色と印象・イメージの関係性を調査してみると、やはり同じような色を使って表現される香りは、言語的にも同じようなイメージがもたれることが分かった。
これらの調査は大学生が対象であったが、香りの専門家である調香師を対象に評価を行ったところ、そこでも同じような結果が得られた。しかし、調香師は評価する個人の間であまり差がなく、言語、色問わず評価の精度が高いことが明らかになってきた。
最後に色を使って言葉を直接表現してみると、「軽いー重い」のように正反対の意味の単語では、色の使われ方が真逆であることが分かった。さらにこれらにもまた色の明るさやあざやかさも関連しそうなことも分かってきた。この結果でも、やはり学生と調香師を比べてみると全体の傾向には差がないが、調香師のほうが評価の精度が高いということが繰り返し示された。
これまでの研究から色を使うことで香りの印象・イメージを表現することが可能であることが見えてきた。今後は研究成果を実装したアプリケーションの開発・公開を行うことで香りの印象表現の一助となることを望む。