オレンジジュースの“本物らしさ”を
追いかけて
~オレンジ果汁代替としての乳化香料の活用~
- < 3分でわかる解説 > オレンジジュースの“本物らしさ”を追いかけて
- オレンジジュースは100年以上にわたり世界の食卓を支えてきた定番の飲料である。しかし近年、その安定供給が大きく揺らいでいる。最大の要因は、ブラジルなど主要産地で深刻化する「カンキツグリーニング病」という病害である。防除法が確立されておらず、感染樹の伐採を余儀なくされるケースも多く、収穫量の減少による果汁の価格高騰が世界的な課題となっている。値上げや販売休止が相次ぐ今、果汁の使用量を抑えつつ品質を保つ「代替素材」のニーズが急速に高まっている。
当社では、オレンジ果汁らしい香りと口当たりの再現を目指し、果実由来の食物繊維を用いて乳化香料の風味発現を改善することで、オレンジ果汁の代替素材を開発した。その効果を客観的に可視化するため、QCM(水晶振動子マイクロバランス)法という微量な質量変化を捉える分析技術を導入した。舌表面を模したセンサーを用い、香料が口腔内にどれだけとどまるかを定量的に評価した。その結果、ペクチン配合の乳化香料は舌に吸着しやすく、果汁感や濃厚感を効果的に補える可能性が示唆された。実際に開発した乳化香料をオレンジ果汁10 %の飲料に添加すると、果汁20 %に近い風味を再現できた。
この技術はオレンジにとどまらず、グレープフルーツやパイナップル、ユズなど幅広い果汁へ展開可能である。原料リスクが高まる時代において、サプライチェーンの安定化に貢献し、香りのチカラで食の未来を支える実用性の高い研究である。
