発酵がもたらす香り
~微生物がつくる味噌のかぐわしい香気~
- < 3分でわかる解説 > 発酵がもたらす香り
- 味噌は日本人の食生活に欠かせない食材である。独特な香りをもつ味噌だが、原料である大豆や麴には味噌のような特有の香りはない。そもそもは香りの少ない原料に、麴菌・酵母・乳酸菌といった微生物の働きが加わることによって初めて、味噌らしい香りができあがるのである。
味噌には原料によって米味噌、麦味噌、豆味噌と種類があるが、その中でも米味噌には甘味噌から辛口味噌までバリエーションが豊富にある。原料の種類は同じでも、配合バランスや熟成期間の長さ、関わる微生物の種類によって、できあがりの風味が変わる。
例えば、白味噌が甘いのは、米のデンプンが麴菌により分解され、主にブドウ糖が生成するからである。熟成期間の長い味噌は、生成したブドウ糖が発酵によって減るため、甘さが減っていく。また、味噌の香りの重要成分である4-hydroxy-5-ethyl-2-methyl-3(2H)-furanone(以下HEMF)は、白味噌からは検出されず、数カ月しっかり発酵させる赤味噌にだけ含まれる。白味噌と赤味噌を比較すると風味の特徴がまったく違うが、赤味噌にある「味噌らしさ」を決定づける重要香気成分の一つがHEMFなのである。ほかにもさまざまな香気成分・呈味成分が微生物の関わりによってつくり出され、味噌の風味ができあがっている。
海外でも、健康面でのメリットや使いやすい風味特徴の日本の味噌は注目されてきており、原料である大豆の調達や品質には今後課題が出てくることも予想される。味噌の代替素材開発は今後いっそう求められるようになるのではないだろうか。