モカコーヒーの香り
~新たな特徴香成分の発見~
- < 3分でわかる解説 > モカコーヒーの香り
- コーヒーは世界各地で生産され、世界中で愛される飲み物である。多種多様なコーヒー豆の中には「モカコーヒー」と呼ばれる、熟した果実やワインを思わせるフルーティーな風味をもつ豆がある。筆者は、あるモカコーヒーを飲んだ際、その芳醇な香りに衝撃を受けた。しかし、その特徴的な香りを生み出す鍵となる成分が何であるかはこれまで未解明であり、当社にとっても、モカコーヒーの香りを香料によって再現することは難しい課題であった。そこで、この未知なる特徴香成分を特定し、新たなコーヒー香料を開発することを目的として、モカコーヒーの詳細な香気分析を行った。その結果、ヒトの鼻を使った機器分析において「フルーティー」な香りとして検出された微量成分はethyl 3-methylpentanoate(E3MP)であると突き止めた。コーヒーからE3MPが検出されたのは、本研究が初めてであった。さらに、もともとフルーティーな要素の少ないブラジル産コーヒーにE3MPを含む香料を添加し、飲用時の風味を評価したところ、「フルーティー」な要素が強くなり、モカコーヒーの風味に近づくことが確認できた。今回の研究成果に基づき、当社はこれまでにないコーヒーフレーバーを開発した。