検索記事一覧『未来』

カオリ to ミライ

五感からの幸せ
~感覚を研ぎ澄ますと“みえて”くる
豊かな世界~

(一社)ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ代表理事
志村季世恵

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<3分でわかる解説> 五感からの幸せ
 ダイアログ・イン・ザ・ダーク 。暗闇の中での対話という意味である。漆黒の暗闇の中では、視覚以外の感覚が研ぎ澄まされるために普段よりも感覚の拡張が起きる。足裏には触感が伝わり、音や香りに集中していくと実に豊かな世界へと導かれる。暗闇を案内する人たちは、視覚障害者。彼らの頭の中には地図がある。それは平面の二次元でなく、立体的な三次元の地図だそうだ。その地図に聴覚、触覚、嗅覚を合わせて駆使しながら外を歩く。五感をバランスよく使うことで、感じる力も高まる。時には手のひらにある画面から目を離し、視覚に頼る生活を見直して五感を育む時間を作ってはどうだろう。

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  • 2023年 (No.41)
  • カオリ to ミライ

カオリ to ミライ

香りとアート
~なつかしい香りが開く記憶の扉、
アートが拓く未来の社会~

嵯峨美術短期大学准教授 / Perfume Art Project代表
岩﨑陽子

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<3分でわかる解説> 香りとアート
 高齢社会に香りのアートはどのような役割を果たすことができるだろうか。
 私はアロマのような香りの身体への直接的効能ではなく、香りのアートによるQOL向上のための感情喚起を目指している。特に人生においてさまざまな経験をくぐり抜けてきた高齢者にとっての「なつかしさ」に注目し、空間づくりやゲーム開発を実施している。
 最近の神経科学や認知心理学では、香りが単体で嗅ぎとられているのではなく、その場の状況を含むコンテクストや、学習によって価値づけられた主観性と共に感じとられるとされている。嗅覚が視覚よりも主観性に左右されるなら、個人の感情や記憶を呼び覚ますためにアートの力が有効であると考えられる。アートは個人的な感情を、表現によって多くの人の共感へと拡げることができる不思議なツールだからである。香りのアートによる一つの作品が、多くの人の個別のなつかしい記憶の扉を開くことを目指している。

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  • 2022年 (No.40)
  • カオリ to ミライ

OUR 技術レポート

SDGs 資源枯渇を防ぐ
新たな香料の役割
~代替肉を中心とする
代替食品向け香料素材の開発~

長谷川香料(株)総合研究所
細貝知弘

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<3分でわかる解説> SDGs 資源枯渇を防ぐ新たな香料の役割
 畜産業が環境に与える影響や世界的な人口増加、食肉消費量の拡大とタンパク質不足問題への関心の高まりに加え、近年の健康志向もあり、日本でも代替肉商品である大豆たん白を主原料とした大豆ミートの普及が進んでいる。長谷川香料ではSDGsへの取り組みの一環として大豆ミート向けの香料素材開発を進めてきた。従来の畜肉加工食品では畜肉の風味を生かしつつ、よりおいしくするために調理感やスパイス感の付与、さらに加熱工程で生じる不快臭(オフフレーバー)を選択的に抑制するために香料が使用されてきた。大豆ミートは主原料が大豆たん白であるため、畜肉本来の香りと味がなく、食肉にはないオフフレーバーがあることから、香料により多くの役割が求められている。その中で、大豆たん白臭の抑制、特徴的な畜肉の香り付与、畜肉・動物脂様の呈味付与に注目して開発を進めた。
 大豆たん白の香気分析を行い、大豆たん白臭に寄与する香気成分を同定した。その結果を基に各成分に有効な素材を組み合わせて、オフフレーバーを抑制する素材、マスキングフレーバーを開発した。長谷川香料では牛肉や豚肉、鶏肉、動物脂の詳細な香気分析と有機合成技術を活用して、高品質な調合香料HASEAROMA®シリーズの開発も進めている。この技術と知見を活用し動物性原料を使用することなく、各畜肉タイプに加えて唐揚げ、ハムなど畜肉加工品タイプの大豆ミート向け香料を開発している。
 香りだけでなく呈味の付与も大豆ミートの高品質化には欠かせない。そこで糖、アミノ酸、脂肪酸などを畜肉の特徴に合わせ配合し加熱によりメイラード反応を促進することで、調理感のある畜肉の風味と呈味を付与するプラントリアクト®を開発した。また日本人の和牛に対する嗜好性の高さに代表されるように、動物脂由来の「コクやジューシー感」「脂の甘さ」付与も重要になる。そこで香気分析より見いだされた動物脂のコクに寄与する香気成分を高含有する動物脂様呈味付与素材コクジュワ®の開発に成功した。これらの各素材を組み合わせることで、大豆ミートの食べ始めから咀嚼、飲み込むまで持続する畜肉様風味を付与することが可能になる。
 長谷川香料では、素材開発だけでなく「香料素材の添加効果の見える化」にも力を入れている。最新の評価技術を活用して、大豆ミートへの香料素材の添加効果を可視化することで訴求力向上を進めている。

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  • 2022年 (No.40)
  • OUR 技術レポート

社会の中の香り

サステナブルで香り豊かな
社会を目指す
~香料業界のSDGsへの取り組み~

日本香料工業会IOFI特命委員
大木嘉子

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<3分でわかる解説> サステナブルで香り豊かな社会を目指す
 私たちの身の回りにはさまざまなにおいがあり、朝起きてから、夜寝るまで香りに囲まれて生活しているといっても過言ではない。菓子や飲料などの加工食品、せっけん、シャンプー、洗剤などの家庭用品には香料が使用されており、香りによって生活に彩りが添えられている。
 香料は、植物や果物など自然界にある原料からつくられ、最終商品(加工食品や家庭用品)に使用されるまで長い道のりをたどる。その間、あらゆる場面においてSDGsに掲げられた課題と直面している。例えばアイスクリームに使用されるバニラ香料の原料であるバニラは、アフリカなど気候変動の影響を受けやすい地域で栽培されている。このような原料を調達する際には、栽培農家に対する支援を通じた地域社会経済への配慮が必要になる。
 一方、天然原料を枯渇させないために、石油をはじめとする安定供給が見込まれる原料から化学的に合成された香料化合物バニリンを用いるという選択肢もある。バニリンはバニラのにおいの主成分で、合成されたものも天然から抽出されたものも、化合物としては同等といえる。香料で使う合成原料は、安全性を確かめた上で規制を守って使っていくことが大前提となる。
 収穫されたバニラビーンズは、そのままではにおいがないが、キュアリングと呼ばれる熟成工程を経ると、バニラ独特の風味が発生する。キュアリングを終えたバニラビーンズが出荷され、原料として調達した香料会社の工場でにおい成分が抽出加工される。天然原料を使用する、あるいは香料化合物を合成する工程においても同様に、省エネ対策、環境への影響を最小限にすることが必要である。さらに、作業現場で働く従業員の労働安全確保も重要である。香料を使用するアイスクリームメーカー(香料のユーザー企業)に対しては、安全に使用してもらえるよう、香料会社として品質保証書や製品ラベルなどによる情報提供が必須である。
 天然原料の保護や環境への配慮、品質と安全性などの取り組みは、一部は法律で定められているが、各香料会社が独自に研究開発、工夫してすでに実施されているものもある。各社の取り組みを補い、香料産業界全体でSDGs達成に向けて前進するために5つの重点分野(①責任ある調達、②環境フットプリント削減、③従業員の福利向上、④製品の安全性、⑤透明性とパートナーシップ)を骨子として、策定されたのがIFRA-IOFIサステナビリティ憲章である。

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  • 2022年 (No.40)
  • 社会の中の香り